大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(ラ)67号 決定

本件記録によると水戸地方裁判所下妻支部昭和三〇年(ヨ)第二〇号仮処分命令の要旨は本件土地建物に対する相手方の占有を解いて抗告人の委任する執行吏にその保管を命ずる。執行吏は現状を変更しないことを条件として相手方にその使用を許すことができるというものであること、同庁同年(ヨ)第二一号仮処分命令の要旨は本件機械器具類に対する相手方の占有を解いて抗告人の委任する執行吏にその保管を命ずる。執行吏は現状を変更しないことを条件として相手方にその使用を許すことができるというものであること、そして抗告人の委任した執行吏は右各仮処分命令を執行したことが認められる。

従つて本件各物件の占有は一応執行吏の保管に移つたのであるから執行吏はこれが管理の方法として目的物を点検し、現状変更のおそれがあると認めるときは債務者たる相手方に対し事前にこれを抑止し、現状が変更されたと認めるときはその状態を除去して現状に回復し債務者に対し今後違反しないように警告することができるのは当然である。

しかしながら債務者が仮処分命令の趣旨に違反して、目的物件の現状を変更したとしても、執行吏が前記仮処分命令の執行又は続行として債務者たる相手方の目的物に対する現実占有を奪うことができるものということはできない。けだし本件仮処分命令はいづれも本件物件の占有状態の現状を維持してこれが明渡又は引渡請求権保全のためなされたもので現状不変更を条件として相手方に使用を許しているものであるから、相手方としては現状不変更の不作為義務を負うだけであつて、物件の使用は右各仮処分によつて、何ら禁止されていないのである。従つて、相手方が右不作為義務に違反したからといつて、執行吏が、自己の判断を以て相手方の使用を禁止することは、仮処分命令の範囲を逸脱するもので許されないところというべきである。

(鈴木禎 川添 花淵)

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